南米大陸の北西端に位置するコロンビアは、中米のパナマと接しており、国土は日本の約3倍を有している。北のカリブ海と西の太平洋の二つの海に面しており、東はベネズエラ、南にエクアドル、ペルー、ブラジルと国境を接している。
そして南米大陸の太平洋岸を南のチリから北へ、ペルー、エクアドルを縦走してくるアンデス山脈は、コロンビア国内で三つに分かれる。そのため山岳地帯は険しく、赤道直下とはいえ万年雪を抱く5,000メートル級の高山がいくつかある
パナマとの国境地帯は、いまだにパンアメリカンハイウェイ建設を阻む熱帯雨林の大湿地がある。常夏のカリブ海地方と、太平洋岸の降雨量の多い高温多湿な大密林。ペルー、ブラジル側のアマゾン河源流の密林地帯、山間の温暖な土地、高地の寒冷な高原地帯など非常に多彩な自然に囲まれている。
気候は日本のような四季は無く、大きく雨季と乾季に分けられるが、雨季といっても日本の梅雨とは違う。スコールのように雨がザーッと降ればすぐやむので、現地では傘を持つ人が少ない。よって天気予報を気にする人はとても少ない。
この国の気温は土地の高さに比例して変わる。海抜が0から1000mくらいの低地は、年間平均気温が30℃以上でとても暑い常夏の地である。海抜1,500mくらいの高さが温暖でもっとも過ごし易く、平均気温が24℃前後の常春の地である。首都のボゴタは約2,600mの高原にあって一年中涼しく、常秋?の地である。
気候の特性から、果物や植物の種類はとても豊富であり、日本では知られていないトロピカルなフルーツが多い。日本国内ではコロンビア産のバナナや花の栽培はあまり知られていないが、コーヒー同様に北米やヨーロッパ、日本へも出荷されている重要な輸出品目の一つである。
人口の分布は気候が温暖な過ごしやすい山岳地方と、マグダレナ川(全長1,550km)が流れる肥沃なカリブ海側の、暑い低地に偏っている。人口約5千2百万人(2,020年)のうち、約40%が4大都市のボゴタ、メデジン、カリ、バランキージャに集中している。都会と地方との社会、経済上の格差がとても大きい。地方の貧しい農民はゲリラや武装犯罪組織からの暴力を避け、都会へ逃げるように出てくる人が多い。都市部では貧困層が増えるに従い、治安が悪くなる原因となっている。
コロンビア人は他の中南米諸国と比べ、先住民であるインディオと白人系の混血が人口の58%と多い。白人系(28%)とともに内陸の山岳地方に多く住んでいる。一般に信仰心の篤いカトリックで、教育熱心でもある。太平洋とカリブ海の海岸地方は白人と黒人系の混血(14%)と黒人(4%)が多く、カリブ海諸国に似ており、開放的で生活様式や話し方、考え方も山岳地方の人達とかなり異なっている。先住民のインディオ系住民はアマゾンや熱帯雨林、山岳地方の僻地に住み、その数も今では1%と非常に少ない。
混血系の人達の肌の色は小麦色をした人が多い。中南米の中でも陽気でとても人なつこく、健康的な美人が多いので有名だ。日本人がイメージするラテンの人達に合致している。一般的に人種偏見は少ないが、それでも現地人の間にこんなジョークがある。「俺のオヤジは人種偏見するやつが大嫌いだ。そして次に嫌いなのが黒人だ。」似たようなブラックユーモア?がいくつかある。
コロンビア人の平均身長は日本人より少し低い程度であるが、見た目はほとんど変わらない。米や豆、とうもろこしに肉を合わせた食事を好む。食生活の違いからか、白人系や黒人系であっても米国人のように体の大きな連中はあまり見かけない。それでも彼らは、日本人は自分達よりも背が低いと思っている。
戦後からビジネスや学術面、情報も米国の影響が強いため、米国人が言っていることを、そのまま鵜呑みにしているようなところがある。世界情勢も、欧米人の視点で扱ったニュースが、無意識のうちに欧米人との視点の違い、または国力や国際影響力の差を考慮しないで見てしまうケースが多いようだ。
コロンビアの政治は大統領制で、中南米諸国では珍しいほど長い間民主政権が続いてきた。2016年最大の反政府ゲリラ組織と、対話による和平が実現された。しかし、完全に和平が実現されたわけでは無い。他にも有力な反政府ゲリラ組織が存在しており、和平交渉は継続中である。
2022年の大統領選にて、元共産ゲリラ組織の幹部であったペトロ大統領が就任した。国民の経済格差是正政策を訴えた国内史上初の左派政権に対する支持率は高いものがあった。当選後に選挙資金の一部が麻薬洗浄資金だという疑いで、大統領の長男と長男の元妻が逮捕された。いくつかのスキャンダルを契機に、連立を組んでいた支持政党が離反し始め、公約していた構造改革が頓挫しつつある。この項を書いている2024年4月、国内の4大都市において非常に大規模な反大統領抗議デモが発生した。
コロンビア経済は、伝統的に輸出の50%を占めていたコーヒーに大きく依存していたが、80年代に入って石炭、石油やフェロニッケル等の鉱物資源の開発が積極的に進められた結果、鉱業が急速な伸びを示し、外貨を稼ぐ重要な産業になった。その他の伝統的な生産物であるバナナ、切り花、エビ類、エメラルド、化学製品、皮革製品などの輸出の伸びも著しく、2018年にはOECDへ37番目の加盟国になった。しかしながら経常収支は赤字が続き、パンデミック以降インフレ率も高いため、貧困層にとっては厳しい生活を強いられている。
太平洋と大西洋の両岸に港を有し、人口が5千万人を超えたコロンビアは、潜在的な経済発展のポテンシャルは大きいと言われているが、いまだに反政府共産主義ゲリラや武装犯罪組織、麻薬犯罪組織、そして一般犯罪の多さ等、治安問題を解決しない限り健全な経済発展は難しい。